今週のお題「忘れたいこと」
父が亡くなった翌年の正月。
一人暮らしになってしまった母のところに、正月の挨拶に行った。
風も無く、穏やかな日だった。
実家に着くと、何か変だ。
玄関は空いているけれど誰もいない!
何処へ行ったんだろう?
トイレか? いない。
物置か? いない。
ん? 仏壇の位牌が無い!
まさか!
徘徊している?
近所を探してもいない。
もしかしたら、父のお墓に行ったのかもと思い行ってみる。
お寺に行く途中で、見覚えのある人影を畑の中で見つけた。
母だった。
近づいて、「何をやっているの?」と声をかけると・・・
「誰だい?」と
え、俺のことわからないのと思ったが、家に連れ帰ることが先と思い、車に乗せようとしたが、怒ってしまい乗ろうとしない。
仕方なく、一緒に歩いて何とか家まで1時間以上かけて帰ってきた。
よほど疲れたらしく、帰ると炬燵に入ってすぐ寝てしまった。
このころから、忘れることが多くなり、ついには息子のことも忘れてしまった。
あれほど、雑言を語っていた母も、女学生時代の楽しかった思い出だけは忘れずにいた。
最期はすべて忘れてしまったが・・・