今年一番の冷え込みの中、防寒のために着太した体でキャスティングをする。
綺麗なU字型のループが伸びきって、リーダー、ティペットが一直線に着水した。
ウェイトを巻き込んだフライに引かれ、ティペットがゆっくりと沈んで行く。
一瞬、ツッ! とティペットが動いたような気がした。
次の瞬間、スーッ!と水中に引き込まれていく。
間髪入れずに左手に握ったラインを引き、合わせを入れる。
ラインに伝わる重量感を感じたと同時に、右手のロッドを立てた。
ラインの先で暴れるトラウトを、ロッドでいなしながらたぐりよせると、背中がブルーに輝く、精悍な顔つきのサクラマスだ。
今日最初の一尾を、優しくリリースする。
アルコールストーブに火を付け、ケトルをかける。
やがて立ち上る湯気に温かさを感じながら、カップにソリュブルコーヒーを入れる。
お湯を注ぐと、あたりに華やかな香りが広がる。
一口含む。
「美味しい」
インスタントコーヒーであっても、外で飲むコーヒーは格別だ。