部屋を出ると、きんもくせいの香りに包まれた。
荷物をバイクに積込みエンジンをかける。
さっきまでの、あまい香りがオイルの匂いに変わっていく。
高速道路を数時間走り佐久で一般道に降りる。
道の駅でカチカチになった体をほぐしていると、スクーターで旅をしている人に会った。
「どこまで行くのですか」と声をかけると、「これから帰るところです」と。
四国の札所を巡り、台風を避けて京都、奈良、和歌山、三重と回ってきたという。
もう30日自宅に帰っていないので、今日中に帰りたいらしい。
いきなり旅の強者と遭遇。
おたがい「気を付けて!」といって別れた。
ここからは、山道に入る。
標高を上げていくと、空気が変わった!
熊笹とススキの草原を太陽が照らしキラキラ輝いている。
その中を走る九十九折の道に入ると「気持ちいい!最高!」と叫びたくなる。
自分が景色の一部になっていく感覚。
生きていることを実感する。
高原の空気を十分に堪能した後は、麓の盆地にある断層湖に向かい、老舗の鰻を頂く。
温泉で疲れを癒し、翌日は標高2,100mの峠越えだ。