皆さんご存じの平家物語の始まりの一節です。
万物は変転し、同じ状態でとどまることは無い。
つい先日まで紅葉で彩られていた木々から葉が落ち、生き物のように風に舞っている。
山道を進むと小さな温泉街にたどり着いた。
1666年からこの地にある温泉旅館。
太鼓の音で歓迎されると、異世界に足を踏み入れたような感覚になる。
まわりの変化が速く、置いてきぼりにされてしまったような太い柱と、黒光りした床に歴史を感じる。
吊り橋を渡った先にある食事処で、囲炉裏焼料理を頂く。
鶏肉を骨ごとすり身にし山椒の実を混ぜた、一升べらが美味しい。
名前の通りお酒との相性が良く、コリッと歯ごたえのある山椒の実が砕けて香りたつと同時にほのかな辛みが広がる。
しかのたたき、ぼたん鍋、いわなの塩焼きと野趣あふれる料理を堪能する。
温泉につかって川を望むと、ヤマメが優雅に泳いでいる。
何もしない贅沢、ゆっくりと時間が過ぎていく・・・
今回の旅で思ったことがある。
意気盛んな頃は、予定をたくさん詰め込んで、より多くの場所を観光することが旅の醍醐味と思っていた。
けれど、ゆっくりと流れる時間を楽しむのも旅の醍醐味だなと感じた。
娑羅双樹の花の色、盛者必哀の理をあらわす。
盛んな者も必ず衰える。
歳を重ねることによって人の心も変わっていくんですね。